「いつでも会える」クラブへ オルカ鴨川FCが地域に広げる「スマイルコミュニケーション」
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【繰り返し会うことで、身近な存在に】
学校やこども園を訪れ、子どもたちと体を動かし、遊び、言葉を交わす。オルカ鴨川FCは、そうした地域との交流を10年以上にわたって積み重ねてきた。
その活動が「オルカスマイルコミュニケーション」だ。2016年に始まったこの取り組みは、体を動かすことや遊び、会話、食事、試合観戦などを通じて、地域との接点を積み重ねてきた。継続して顔を合わせる中で、子どもたちにとってオルカの選手は少しずつ身近な存在になっている。
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【「地域と共に」広がった6つの「スマイル」】
始まりは、クラブを知ってもらうための一歩だった。
「オルカスマイルコミュニケーション」がスタートした2016年、オルカは地域でまだ十分に知られていなかった。子どもたちの運動不足や外遊び離れも背景にあり、体を動かす楽しさを伝えようと、選手やスタッフが学校を訪ね、一緒に遊び、ボールを蹴る活動が始まった。
活動の柱は「動いてスマイル」「聴いてスマイル」「遊んでスマイル」「食べてスマイル」「観てスマイル」の5つ。体を動かす、選手の経験に耳を傾ける、休み時間に遊ぶ、給食を囲む、ホームゲームを観戦する。それぞれの形で子どもたちとの接点をつくってきた。

近年は、その中に「見つけてスマイル」も加わった。クラブが地域へ出向いて子どもたちの新たな可能性を見つけるとともに、活動を通して子ども自身にも「自分の好きなこと」を見つけてもらう。「観てスマイル」も続いており、時代や地域のニーズに合わせながら活動の幅を広げている。
こうして生まれた地域との接点を、育成コーチの木原梢は「街の日常」という言葉で捉えている。
「オルカ自体が街の日常に入り込んでいくことが、一つのテーマとしてあります。『地域と共に』という中で、地域の皆さんにこちらへ来てもらうだけではなく、私たちからも歩み寄っていきたい。サッカーに限らず、遊びや給食など、いろいろな場面でつながっていけたらと思っています」
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【サッカーが好きじゃない子ともつながりたい】
スマイルコミュニケーションでは、サッカーに親しみのない子どもたちとも触れ合う。休み時間に校庭へ出れば、鬼ごっこや縄跳びに誘われる。木原コーチが子どもたちに追いかけ回され、延々と鬼を務めることもあるという。
「食べてスマイル」では給食を囲み、同じ時間を過ごす。今田も、そうした交流ではプレー中に見えなかった子どもたちの一面に触れ、心を開いてくれる感覚があるという。

「やっぱり、サッカーが好きな子ばかりではないですからね。サッカーが好きな子たちは自然と寄ってきてくれて、『サッカーしよう』となるんですけど、そうじゃない子たちともつとつながっていきたいというのが私たちの本音です」
学校から寄せられる要望も、活動の幅を広げてきた。その一つがキャリア教育だ。木原コーチをはじめ、取締役社長兼GMの北本綾子氏、テクニカルダイレクターの矢野喬子氏にはJFAの「夢先生」に参加した経験があり、「聴いてスマイル」でも夢を目指してきた過程や挑戦について伝えている。
「特に話をする活動では、子どもたちと同じ年代だった時に私たちが何を考えていたのか、そういうことを聞きたいと言われます。華やかな部分だけではなく、みんなからは見えないところの話も聞かせてほしい、と。大変だったことや、うまくいかなかった時にどうしていたのか。そういう部分も含めて話してほしいという要望はあります」(木原コーチ)
今田が子どもたちに届ける言葉も、自身の経験から生まれている。

「一番伝えたいのは、『仲間を大切にすること』と『人と比べず、自分を信じること』です。仲間はチームメートだけではなく、家族や親戚、高校や大学の恩師など、サッカーを通して私を支えてくれた人たち。私自身、うまくいかない時ほど人と比べてしまうので、自分を信じて、自分と向き合おうと伝えています。挫折した経験も多く話します。楽しいことばかりではないと伝えることで、よりリアルな気持ちが届くと思うからです」
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【子どもたちが思い出させてくれた「楽しむ心」】
今田は、子どもたちの成長を見守る中で、自分自身が忘れかけていた感覚にも気づかされたという。
「動いてスマイル、聴いてスマイルに参加させていただきました。鴨川市内のこども園では、定期的に動いてスマイルを行うのですが、年少さんの頃はお話が聞けなかったり、まともにキックもできずに手でボールを触っていた子どもたちが、年中になると先生の話を聞けるようになったり足でボールを扱うようになったりと、一生懸命頑張っている姿を見て成長を感じた時は、とても感動したのを覚えています」
高校生になる頃から、今田は好きなサッカーを続けながらも、先への不安や、なぜ思うようにいかないのかと悩むことが増えた。そんな経験から、小学生に「うまくいかなくて不安になったりするよね」と話すと、返ってきたのは「思わない!」「考えたことなーい」という言葉だった。
「その時に、小学生の時は今を全力で楽しんでいたよな、と思ったんです。純粋に楽しむ心を忘れていたことに気づいて、私もいろいろなことを純粋に楽しもう! 小学生を見習おう!と思いました」
子どもたちとの関わりには、選手が自ら考え、実践する機会もある。低学年向けのサッカースクールでは、選手たちがグループでメニューを考え、木原コーチと相談しながら内容を決め、当日の指導まで担う。その過程で、選手たちの主体性も育まれていると木原コーチはいう。
「『どうやって関わったら子どもたちに楽しんでもらえるのか』『どういうふうに伝えたらいいのか』ということを自分で考えるようになります。その経験が、トレーニングで『この練習にはどういう意味があるんだろう』と考えることにもつながる。選手としても、そういう部分につながっていけばいいなと思っています」

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【顔の見える関係が、スタンドにつながる】
2016年から活動を積み重ねる中で、地域との関係にも変化が表れている。学校でオルカを知ったことをきっかけにサッカースクールへ通い始める子や、「オルカでサッカーをやりたい」という子が増え、スタジアムでも子どもたちの姿が目立つようになった。
「子どもたちから声をかけてもらう回数も多くなりました。鴨川では、各小学校やこども園を含めて、オルカのことをかなり知ってもらえるようになってきたのかなという実感があります」(木原コーチ)
その距離の近さは、選手の日常にも表れている。地域で交流した人から「あなたといると元気になる」と言われることもあり、そこから試合観戦やTシャツの購入につながる姿も目にしてきた。
「鴨川市ではスーパーに行ってもご飯屋さんに行っても、どこでも声をかけられることが多いです。オルカが街の人から愛されていることを実感しますし、もっと見に来てもらえるために、サッカーをより頑張らなければいけないなという気持ちになります」(今田)
クラブが足を運ぶ先は、子どもたちが過ごす場所から地域のさまざまな場へと広がっている。選手やホームタウン活動の担当スタッフは、地域の高齢者が集まるサロンにも出向き、ハイキングやゲートボール、ワークショップなどを一緒に楽しむ。そこで交流したグループが、今度はそろって試合を観に来ることもあるという。
学校やこども園、地域のサロンで生まれたつながりは、少しずつスタジアムにも広がっている。

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【地域でもらった力を、ピッチで返す】
地域の人たちと顔を合わせる機会を、これからも増やしていきたい――。木原コーチが思い描くのは、鴨川で暮らしていれば、どこかで選手やスタッフに会えるようなクラブだ。
「いつでも会えるような存在でありたいですね。鴨川にいればオルカの選手に会えるし、私たちの方からもどんどん地域の皆さんに会いに行く。普及活動では子どもたちと関わり、選手やスタッフはご年配の方たちのところにも出向いています。いろいろな世代の方に楽しんでもらい、子どもからご年配の方まで応援してもらえて、実際に触れ合うこともできる。これからも『地域と共に』歩んでいけたらと思っています」
今田も、街で声をかけられるたびに、「オルカの選手」として地域の人たちから見られていることを意識している。
「サッカー選手である以上、ピッチで活躍して、いつも私がもらっている元気を結果や優勝という形で恩返ししたいです。オルカが、鴨川市の中で明るい太陽のような存在になれたら嬉しいです!」
文=松原渓(スポーツライター)
一般社団法人日本女子サッカーリーグ 


