連載コラム

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2026年06月30日

なでしこリーグがつなぐ地域の絆~愛されるシンボルを目指して~吉備国際大学Charme岡山高梁

サッカーを通じて"思いやり"を伝える場に 吉備国際大学Charme岡山高梁が届ける人権スポーツふれあい教室

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【子どもたちと一緒に走り、考え、喜び合う時間】

川上小学校、新見矢神小学校、呉妹小学校、加賀南小学校――。
吉備国際大学Charme岡山高梁の選手たちは、ピッチを離れ、地域の小学校を訪れている。

体育館や校庭には、子どもたちの元気な声が響く。選手たちはその輪の中に入り、一緒に走り、声を掛け合いながら作戦を考える。活動の中心となるのは、仲間と協力して取り組むレクリエーションやサッカーだ。

出された課題に対し、子どもたちは自然と意見を交わし始める。どうすれば成功できるのか。誰がどの役割を担うのか。試行錯誤を重ねるうちに少しずつ形になり、達成した瞬間に歓声と拍手が広がる。励まし合い、認め合う姿が教室のあちこちで見られた。

選手たちは、こうした体験を通して、仲間と関わることの大切さを伝えていく。相手を尊重すること、協力すること、そして互いを思いやること。その一つひとつを、言葉だけでなく実践の中で届けている。

GKコーチの西端優輝氏は、活動の狙いをこう説明する。

「『人権スポーツふれあい教室』では、サッカーの楽しさを感じてもらいながら、ルールを守ることの大切さや、チームメートと協力すること、対戦相手をリスペクトすることなどを、一緒にサッカーをする中で伝えています。最後には選手から子どもたちへメッセージを送って意見交換を行い、感じたことや考えたことを共有する時間も設けています」

加戸は、子どもたちが自然に参加でき、笑顔で楽しめる雰囲気づくりを意識している。

「レクリエーションでは、仲間を思いやりながら協力して取り組めるメニューを工夫して実践しています。人権についてのお話は、自分の経験や日頃から大切にしている考え方を伝えています。スポーツを通じて、誰かを思いやる気持ちや仲間と協力することの大切さを感じてもらえたらうれしいです」

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【「知る」から「感じる」へ スポーツが担う人権啓発】

「人権スポーツふれあい教室」は、法務省が実施する人権啓発事業の一つだ。岡山県では、県や市町村、岡山地方法務局、人権擁護委員連合会等が、それぞれの役割に応じて相互に連携・協力する横断的なネットワーク協議会を地域ごとに設立し、その運営を支えている。

県内で競技やクラブの枠を越えて取り組まれている点も、この活動の特徴の一つだ。多様性を認め合うこと、仲間と協力して目標に向かう姿勢を伝えている。岡山地方法務局は、その背景を次のように説明する。

「これまで人権について知ってもらう活動は、スタジアム内での啓発などが中心でしたが、いじめの問題が目に見える形で現れている今、ただ知ってもらうだけでなく、受け取る側の気持ちが変わるような取組みまで進める必要があると考えました。そこで、フェアプレーの精神を大切にし、スポーツ団体と法務省が協力して、いじめの防止など、主に子どもに関わる人権の大切さを若い世代に広めていく事業を始めました」

吉備国際大学Charme岡山高梁もこの趣旨に賛同し、年に5回ほど、県内の小学校を訪問している。

人権という言葉は、子どもたちにとっては抽象的になりがちだ。しかし、活動の中で体を動かしながら、その意味が具体的な感覚として理解できるようになる。

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協力しなければ達成できない課題がある。相手を尊重しなければ試合は成立しない。自分の考えを伝え、仲間の声にも耳を傾ける――。サッカーには、人と関わる要素が数多くある。そうした競技特性が、人権を考えるきっかけとなっている。

「選手と一緒に身体を動かすことで、子どもたちは『頭で理解する』のではなく『体験として理解できる』ようになると感じます。また、憧れの存在であるスポーツ選手から学ぶことで、子どもたちの心にも残りやすく、より深く学ぶことができると思います」

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【地域の子どもたちと向き合う シャルムだから届けられること】

吉備国際大学Charme岡山高梁には、大学で学ぶ学生選手と、プロ契約選手が在籍している。立場の異なる選手たちが同じピッチに立ち、一つの目標に向かう。岡山人権啓発活動地域ネットワーク協議会は、そうしたチームの姿が子どもたちへのメッセージになっているとみている。

高梁川流域を中心に活動する吉備国際大学Charme岡山高梁にとって、学校訪問は地域との大切な接点でもある。試合会場とは違う距離感で、選手やスタッフが地域へ入り込み、直接言葉を交わす。西端コーチは、この活動をクラブにとって重要な地域貢献活動の一つと位置づける。

「ホームタウンである高梁市を中心に、地域の子どもたちと直接関わることができる貴重な機会だと考えています。サッカーを通じて、仲間を思いやることや協力することの大切さ、そして人権について考えるきっかけを届けられることをうれしく感じています。子どもたちの成長に関わり、地域社会とのつながりを深めていくことは、ホームタウンに根ざしたクラブとして大きな意味があると思います」

子どもたちにとっては、女子サッカーを身近に感じるきっかけにもなる。競技としての魅力だけでなく、地域で活動する選手の存在を知ることが、将来の応援や関心につながっていく。

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「子どもたちにスポーツの楽しさやクラブの存在を知ってもらうことで、将来的なファンや競技人口の拡大につながります。また、子どもたちに夢や目標を持つきっかけを提供できるだけでなく、クラブ側も地域ニーズや子どもたちの考えを直接知ることができます。こうした双方向の関係を続けることが、クラブの成長や地域からの信頼につながると考えています」(西端氏)

地域の中で顔の見える関係を築きながら、吉備国際大学Charme岡山高梁は歩みを重ねている。

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【「また来てね」が教えてくれたこと】

活動を終え、帰る時に、校舎の窓から子どもたちが大きく手を振る。その声と笑顔が、選手やスタッフの背中を押す。

学校ごとに雰囲気は異なる。すぐに打ち解ける子もいれば、少し距離を置いて様子を見る子もいる。それでも時間が進むにつれ、少しずつ声が増え、表情がやわらいでいく。その変化は、選手やスタッフにとっても励みとなっている。西端コーチは、活動後の光景に手応えを感じている。

「どの学校でも子どもたちが積極的に参加してくれて、とてもありがたいです。シャルムのことを知ってくれている子も多く、訪問すると喜んで迎えてくれます。帰る時に、校舎の窓から手を振りながら『また来てね!』と大きな声で呼びかけてくれることもありました。そうした素直な反応や温かい言葉が、大きな励みになっています」

加戸もまた、子どもたちのそうした変化に触れてきた。

「普段は消極的で、なかなか仲間の輪に入ることが難しかった子が、レクリエーションの時間に積極的に取り組んでいたと担任の先生から聞きました。その話を聞いた時は、とてもうれしい気持ちになりました。また、人権についてお話をした時に、『私もきれいな心をつくっていきたいです』という感想を聞くことができ、とてもうれしくて心に残っています」

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普段から大切にしていること、チームの中で意識していること、サッカーを通じて感じてきたこと。それを自分の言葉に置き換える時間が、加戸にとっても大きな意味を持っている。

「普段自分が意識していることや大切にしている考えを言葉にして伝えることで、自分自身にとっても再認識する貴重な時間になっています。人権について伝えることで、自分自身も日常生活やサッカーの場で、思いやりやリスペクトの気持ちを大切にしながら行動していかなければならないと感じています。子どもたちと関わる中で、応援されるチーム、憧れてもらえるチームでありたいという思いも強くなりました」

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【学校から地域へ広がる思いやりの輪】

岡山人権啓発活動地域ネットワーク協議会は、この活動の広がりに期待を寄せる。

「子どもたち一人ひとりが『自分も相手も同じように大切な存在である』と実感し、その思いが学校や家庭、地域全体へ広がっていくことで、互いを尊重し合える温かい地域社会の実現につながっていくことを期待しています」

西端コーチは、活動の継続と女子サッカーの普及にも目を向けている。

「今後もこうした活動を継続し、より多くの子どもたちにサッカーの楽しさや、人を思いやる気持ち、協力することの大切さを伝えていきたいと考えています。シャルムの選手と直接触れ合う機会を通じて、子どもたちに女子サッカーを身近に感じてもらい、『自分もやってみたい』と思うきっかけをつくることで、女子サッカーの普及や競技人口の増加にもつなげていきたいです。地域に支えられているクラブだからこそ、ホームタウンである高梁市をはじめとした地域の皆さまとの関わりを大切にしながら、スポーツを通じた地域貢献活動の輪をさらに広げていきたいと思います」

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学校で生まれた気づきが家庭へ、地域へと根付いていく。その積み重ねが、クラブと地域の絆をより確かなものにしていく。

文=松原渓(スポーツライター)

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