連載コラム

このページを共有する
  • ツイートする
  • シェアする
  • ブックマーク
  • LINEで送る

2026年07月17日

なでしこリーグがつなぐ地域の絆~愛されるシンボルを目指して~バニーズ群馬FCホワイトスター

「好き」を未来につなぐ夢授業 バニーズ群馬FCホワイトスターが届けるキャリア教育

________________________________________

【地域の未来へ届ける「夢授業」】

「夢はありましたか?」

榛東村立榛東中学校で行われたバニーズ群馬FCホワイトスターの「夢授業」。現役アスリートを前にした生徒たちからの質問に、コーチ兼任選手である木龍七瀬はこう答えた。

「私には子どもの頃、夢はありませんでした。好きなことをしていたら、たまたまそれが仕事になっただけです」

現役選手が自身の経験を語り、生徒たちが将来や働くことについて考える。自治体との包括連携協定を背景に、クラブは地域の学校でこうした活動を重ねてきた。スポーツの魅力を届けるとともに、子どもたちが自分の進路や生き方を考えるきっかけをつくる取り組みだ。教室で交わされる言葉は、地域とクラブを結ぶ新たな接点にもなっている。

20260717_バニーズ_1.png

________________________________________

【地域との連携から生まれたキャリア教育】

ホームゲームへの市民招待、公民館でのサッカーイベント、自治体の広報やSNSを通じた試合情報の発信。バニーズ群馬FCホワイトスターは、地域との接点を積み重ねてきた。学校への訪問授業も、その流れの中で生まれた活動だ。

前橋市をはじめ、榛東村、玉村町との包括連携協定を背景に、学校訪問などの地域貢献活動を進めている。クラブ広報担当の飯尾友朗氏によると、「夢授業」もそうした取り組みの一つとして実施している。

榛東中学校での実施は、榛東村長からの紹介をきっかけに決まった。選手たちを講師として迎えた理由を、石関和夫校長はこう説明する。

「榛東村長から紹介があり、例年本校で実施している『キャリア教育講演会』の講師として活用できると考えました。様々な職業に就いて努力している方や、自分の強みを生かして人生を送っている方のお話を聞くことで、生徒たちには自らの進路の幅を広げ、将来についてより深く考えてほしいと思っています」

20260717_バニーズ_2.png

________________________________________

【「好き」を仕事にするということ】

これまでの夢授業では、バニーズ群馬FCホワイトスターに所属するプロ契約選手と地元企業で働く選手が講師を務め、「働くこと」をテーマにした講義や質疑応答を通して、生徒たちと向き合ってきた。

飯尾氏は、この活動について「サッカーを含めたスポーツの素晴らしさ、感動を伝えることです」と話す。プロとしてスポーツを職業にすることや、現役引退後のセカンドキャリアについても伝え、生徒たちが将来を考えるきっかけづくりにつなげている。

木龍自身も、競技生活の中で思い通りにならない時間を経験してきた。ケガによってプレーできなくなった時期には、一度は大きな挫折を味わったという。

「ケガをした時に挫折しましたが、一日一日治っていくことを実感することができて、またサッカーをやりたくなりました。みなさんも毎日続けていれば、どんな時でも少しずつでも良くなることを伝えました。最後は自分で決めて、自分の人生を好きな形で歩んでください、と話しました」

________________________________________

【子どもたちとの対話で見つめ直した原点】

夢授業では、生徒たちとの対話に多くの時間が割かれた。競技生活や海外での経験、サッカーを仕事に選んだ理由など、一つの質問から話題は次々と広がり、予定していた時間では足りなくなるほどだった。子どもたちとの対話は、木龍自身がこれまでの歩みを振り返る機会にもなったという。

「質問する時間にたくさん子どもたちがいろいろな質問をしてくれて、時間が足りなくなっていました。こんなに質問があると思わず、すごくうれしかったです。自分自身、子どもの頃のことを思い出して話す機会にもなりました。なんで始めたか、なんで続けてきたか。やっぱりサッカーが好きだということに気付かされました」

参加した生徒の中にはサッカーをしている子どもはいなかった。スポーツに少しでも興味を持ち、自分に合った関わり方を見つけてもらえたら――。木龍は、スポーツを支えるさまざまな仕事にも目を向けてほしいと願っている。

「少しでも興味を持ってもらって、サッカー選手だけでなく、トレーナーや選手を支える立場でも仕事があることも教えられる存在になれればと思いました」

教室では、授業の様子を石関和夫校長も見守っていた。生徒たちの反応を間近で見た校長は、今回の授業について次のように振り返る。

「選手の方々が、自信をもって話されている姿が印象に残りました。質問がたくさん出たことから、生徒たちがとても興味深く感じていたことが分かりました。現役アスリートやクラブスタッフという『本物』に触れることは、生徒たちにとって強烈な体験になると思います。今後の人生に生かされるといいなと思います」

20260717_バニーズ_3.png

________________________________________

【教室からスタジアムへ】

夢授業を通じて、クラブとの新たな接点も生まれている。飯尾氏によると、活動に参加した児童生徒の中には、それまでサッカーに興味がなかったにもかかわらず、「スタジアムで試合を観たい」と話す子どももいたという。教室での出会いが、クラブを知り、地域のスポーツに触れるきっかけになっている。

前橋市との包括連携協定では、学校訪問に加え、市民向け健康づくり教室や市が実施するスポーツ・健康事業への参加なども掲げられている。トップレベルのプレーを身近に感じる機会を増やし、前橋市スポーツ推進計画が掲げる「する・みる・ささえる」の考え方を地域に広げていくことも、その取り組みの一つだ。

飯尾氏は、地域で活動を続けるクラブの目標をこう語る。

「おこがましいですが、チームの存在が地域の誇りになりたいと考えています」

授業で生まれた出会いが、スタジアムへ足を運ぶ一歩につながっていく。夢授業は、子どもたちが将来を考え、地域のクラブと出会う場にもなっている。


文=松原渓(スポーツライター)

このページを共有する
  • ツイートする
  • シェアする
  • ブックマーク
  • LINEで送る