連載コラム

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2026年01月14日

なでしこリーグがつなぐ地域の絆~愛されるシンボルを目指して~SEISA OSAレイア湘南FC

町とともに育つチーム、SEISA OSAレイア湘南FC 地域に咲くピンクの絆

【地域の小さなイベントに、ピンクのユニフォームが溶け込む光景】

秋の地域イベントでは、ピンクのユニフォーム姿がごく自然に溶け込んでいる。中井町のフェスティバル、二宮町の商工会まつり、小田原市内の歩行イベント。受付を手伝い、子どもたちの列を整え、声をかけながら会場を回る姿は、特別な演出ではない。それでも、場の空気をふっと明るくする存在になっている。

なでしこリーグ2部のSEISA OSAレイア湘南FCは、こうした地域の行事に継続的に関わってきた。人口規模の小さな自治体では、イベント運営の人手不足が常態化しており、クラブに声がかかるようになったのも、そうした相談からの流れだった。そこに、「地域の力になりたい」「もっと知ってもらいたい」というクラブの想いが重なった。

活動の場は祭りだけにとどまらず、大磯町では幼稚園・保育園でのボール遊び教室や健康イベントにも選手が参加する。子どもたちと目線を合わせ一緒に体を動かす姿は、まさに地域の一員だ。

専用スタジアムを持たず、地域の支援を受けて活動してきたSEISA OSAレイア湘南FCにとって、自治体の応援は欠かせない。ピンクのユニフォームが自然と受け入れられる光景は、クラブが地域に「必要とされる存在」になりつつあることを静かに物語っている。

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【複数の地域とともに進むクラブ】

SEISA OSAレイア湘南FCの地域活動は一つの自治体にとどまらず、中井町、二宮町、大磯町など複数自治体との協力関係に支えられている。地域連携担当の江原奏音氏は、その重みをこう語る。

「なでしこリーグ昇格を目指す段階で、推薦をいただいた自治体とのつながりは今でも強く、その応援があったからこそ、今なでしこリーグでプレーできています。様々な形で活動のサポートをいただいているので、私たちが貢献できるところは積極的に取り組んでいきたいと考えています」

クラブにとって自治体の理解と後押しは不可欠だった。現在もスタジアムや練習環境の提供など、それぞれの地域が異なる形で支援を続けている。さらに、地元出身選手が多いことも、心理的な距離を縮めている。
面識のある選手に声をかけ、支える人が増えていく。そうした関係が少しずつ定着してきた中で、レイアは現場を支える存在として地域を支えながら、自らも支えられてきた。この双方向の支え合いこそがクラブの地域活動の原点だ。

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【町の祭りから、子どもと健康を支える現場へ】

中井町の市民祭り「美・緑なかいフェスティバル」では、高齢化や地域団体の減少によって、運営を支える人員不足が課題となっていた。そこに加わった選手たちは、若い力で現場を支えている。

「若い方たちが参加してくれることで、イベントが活気づいてきました」と中井町産業観光課の曽我さんは話す。小さな子どもたちに笑顔で接する選手の姿は、従来の"大人中心の運営"にはなかった柔らかな空気を生んでいるという。

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一方、大磯町では活動が明確に「健康・スポーツ推進」と結びついている。大磯チャレンジフェスタや幼稚園・保育園でのボール遊び教室では、選手と触れ合うこと自体が参加の動機になった。スポーツ健康課の担当者はこう語る。

「選手の笑顔や活力に触れることで町民も元気をもらっています。また、ピンクのユニフォームがとても印象的で、サッカー教室では選手たちが小さなお子さんにも優しく丁寧に接して、保護者の方も喜んでいました」

スポーツイベントではヨガ教室、サッカー教室、PK対決などを行い、これまで縁が薄かった層、小さな子どもや女性の参加も増えているという。

こうした各地の反応を、クラブ側も実感している。地域連携を担う江原氏のもとには、運営側・住民側の双方から声が届く。

「『手伝ってくれて助かった』『笑顔で対応してくれて明るかった』などの声をいただくことが多いです。地域住民の方からも『元気でいいね』『頑張ってね』と声をかけてもらっています」

中井町では、人手不足という現実のなかで"イベントを続ける力"として、大磯町では、子どもや健康を支える"スポーツの入り口"として。自治体の課題や目的に応じて役割を変えながら、SEISA OSAレイア湘南FCの活動は確実に広がりを見せている。

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【選手たちが感じた「支える」ことの重み】

地域での活動は、選手たちの内側にも変化をもたらしている。キャプテンの夏目萌由は、運営に加わる中で、日々の練習や試合が多くの人に支えられていることに気づかされた。

「毎日大好きなサッカーを何不自由なくできているのは当たり前ではないと感じました」

準備や片付けまで含め、多くの人の協力で成り立つ現場に立ったことで、"支える人の存在"をより具体的に感じたという。その気づきは、「地域に愛されるチーム」というキーワードとも重なる。

「チームの認知度を高め、地域とのつながりを作ることが大切だと思います。なでしこリーグは地域の方々の支えがあって成り立つので、ただサッカーをしているだけではダメだと感じます」

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地域活動は、クラブの存在理由を選手自身が確かめる時間でもある。大磯町役場に勤務する針生理菜は、幼稚園・保育園でのボール遊び教室を通じて、自身の原点に立ち戻った。

「『またやりたい』という声を聞き、サッカーの楽しさを感じてもらえて嬉しかったです。子どもたちがどんなメニューも最後まで全力で頑張る姿は刺激的で、初心に戻る大切さを改めて感じました」

針生はまた、地域活動がチームを知ってもらえる良い機会と捉えている。競技者である前に一人の社会人として「敬意を持つ」姿勢を大切にし、その誠実な向き合い方がクラブへの信頼を静かに積み上げている。

地元・二宮町出身の武莉子が語るのは、地域との関係が積み重なる実感だ。

「『今年も来てくれる?』『来年もよろしくね!』など、私たちを待ってくれている言葉はとても嬉しいです。地域の方々に愛されることがレイアの選手としての価値だと思います」

住民の応援の言葉は、選手の情熱にも還元されている。夏目は「地域の方々に勇気や感動を与えられる選手になりたい」と語る。針生は「結果で恩返しできるように頑張ろう」という思いに背中を押され、武もまた、「試合を観に来られない人たちにもインターネットを通して結果で期待に応えたい」と視線を前へ向けた。

こうした触れ合いは地域側にも変化を生んでいる。大磯町スポーツ健康課は、住民とスポーツ選手が触れ合うことで「スポーツを身近に感じてもらったり、運動を始めるきっかけづくりになったりすることで、町全体が元気になるような地域づくりをしていきたい」と展望を示す。

選手が地域で受けた声援が力となり、その熱が再び地域を動かす。その往復が、SEISA OSAレイア湘南FCの地域貢献を単発の"参加"ではなく、継続的な"相互作用"へと育てている。

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【「支える」から「ともにつくる」へ。行政とクラブの新しい関係】

祭りの運営を支える"人手"として始まった協力は、いまや町の健康づくりや子どもの運動支援へと広がった。

一方で、中井町の曽我さんは現場を見つめる立場からこう話す。

「イベント内でのPRが十分でなく、地域住民の理解が進んでいないのが現状だと思います」

地域住民の理解を深め、活動を伝える工夫が今後の課題だ。

大磯町スポーツ健康課は、長期的な視点でクラブとの連携を見据えている。

「大磯チャレンジフェスタや幼稚園・保育園でのボール遊びを通じて、幼少期・学童期の運動・スポーツに触れるきっかけづくりに貢献していただいています。行政とスポーツチームが連携することで地域の活性化や町の知名度向上にもつながっていますが、『クラブを応援する機運をどう醸成していくか』が今後の課題です」

行政とクラブは、支援する/されるの関係を越え、ともに地域の空気を育てる段階へと進んでいる。

一方でクラブにも、継続のための現実的な制約がある。なでしこリーグ昇格後は試合数と遠征が増え、依頼に対応できないケースも出てきた。秋はイベントが重なりやすく、下部組織(U-18、U-15)の派遣で補う場面もある。江原氏は、練習時間や仕事との両立、疲労やコンディションも踏まえながら、PR効果や地域性、スポンサーとの関わりを見極めて優先順位をつけていると話す。そのうえで、「住民の方々とのつながりを強めて試合観戦につなげていきたいです」とその先のイメージを描く。

地域との接点を"点"ではなく"線"にしていくために、小さな地区の祭りや子ども会のイベントにも関わり、地域の「日常」の中でクラブをより身近にしていくつもりだ。

「地域の誰もがレイアを知っていて、皆さんに『私たちの町といえばレイア湘南』『レイアの試合を見にいくのが日常』と言っていただけるくらい浸透させたいです」

SEISA OSAレイア湘南FCは、競技成績だけで評価されるクラブではなく、町の暮らしに根付いた"身近な存在"になりつつある。祭りの担い手不足から始まった協力は、やがて子どもの成長や健康づくりへと広がり、地域の誇りを育てる活動になった。その積み重ねが、クラブを「町とともに育つ存在」へ変えていく。


文=松原渓(スポーツライター)

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