連載コラム

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2023年08月29日

なでしこリーグのSDGs もう一つのゴール ディアヴォロッソ広島編

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ディアヴォロッソ広島は広島県安芸郡熊野町をホームタウンとし、広島県全域でホームゲームを開催しています。ディアヴォロッソ広島は、今シーズンから運営体制を大きく変更しました。そして、ホームゲームが幕を上げ、小さなお子さんを連れて試合会場に来る人がいる現実を見て新しい取り組みを始めることを決意しました。乳幼児が過ごしやすい専用の「保育ルーム」を設置したのです。当面の対象者は選手・スタッフを含む両チーム関係者、マッチオフィシャル、試合運営者等のゲームに関わる方です。スタッフ1名を配置しますが託児業務は行わず、お子さんをお世話する方が同伴することを「保育ルーム」の利用条件の原則としました。

背番号1を背負う湯浅里香子選手は23歳。昨年に妊娠・出産し、しばらく試合から遠ざかっていましたが、今シーズンからディアヴォロッソ広島でプレーすることになりました。このチームへの移籍を勧めた岩田純児監督は、湯浅選手に出産後もプレーを続けてほしかったと言います。
「湯浅には『僕らはクラブとしてできることを何でもやる』と伝えました。実力を買っていたことはもちろんですが、お子さんがいることを、サッカーを続けるための障壁にしたくなかったし不安を解消してあげたかったです」
ディアヴォロッソ広島は、まず、湯浅選手と相談。さらに、地元の保育所や教育長からアドバイスを受けた上で「保育ルーム」の場所や運用方法を具体的に検討しました。小さなお子さんを連れた方はベビーカーを押して来場することが多いため、動線に階段や段差のない場所を優先する必要がありました。そして、強い日差しや雨を避けるために屋根の存在が重要なので、スタンドではなくスタンドの下のピッチに近い場所(選手控室や会議室)に部屋を確保。水道(施設によっては温水も可)やイス、机があり、おむつ替え等も可能としました。さらには、お子さんが動ける広さと柔らかで清潔な床を確保する工夫もしました。

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シーズンが開幕し、当初4ヶ月間の利用者は湯浅選手(母親が同伴)とチームスタッフに限られていますが、今後は、マッチオフィシャルや対戦チームの関係者にも利用していただくことを望んでおり、ディアヴォロッソ広島は積極的に「保育ルーム」の存在をアナウンスしています。そして、こうした周知活動が、全ての人の不平等をなくし、健康や福祉を増進し、多くの人が住み続けられるまちづくりにつながることを願っています。
「女子サッカーを通じて家族の支え合いや地域の助け合いを伝えたり、クラブの価値を高めたりすることができるのではないか」岩田監督は、さらに、こんな思いも明かしてくれました。
「『選手たちに対して何をできるか』から検討を始め、女性が何かをする上で障壁となるものを取り除くことが重要です。それを地域の皆さんに知ってもらい、一歩ずつ、(女子サッカーの)外に広げていくことができればと思います」
今は利用者の少ない小さな取り組みかもしれません。それでも、こうして前に進み始めたことが重要だと、関わる誰もが考えています。当然のことながら、クラブの思いは地域に伝わり始めています。熊野町教育長の平岡弘資さんは、この取り組みについて、このように話します。
「熊野町では、町内の事業所で頑張って働いている選手の姿を見て応援したいという人が増えてきました。そうした中で「保育ルーム」の取組は素晴らしいと思います。こうした取組は熊野町にとっても、チーム応援だけでなく誰もが元気で健やかに暮らせる町づくりにつながるものと感じています。」

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ディアヴォロッソ広島は地域の皆様と一緒に、活気あふれる社会の発展に貢献することを目指しています。その象徴として公式サイトのクラブビジョンのページには湯浅選手の写真がレイアウトされています。今回の取り組みに支えられ、湯浅選手はチームの副主将として安心してプレーを続けています。
「とてもやりがいがあります。近くで応援してくれる家族はもちろん、ファン・サポーターも試合を見て感動してくださっている。子どもの健康や環境を心配せずにスタジアムに連れて行けるのは『頑張れる源』かな。こうして私がプレーしていることを伝えたいです。女子・男子の関係なくサッカーファミリーとして日本を盛り上げていけたらと思います。」
「サッカー王国」といわれてきた広島県の若い小さなクラブが、明日につながる大きな一歩を踏み出しました。

Text by 石井和裕

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