連載コラム

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2023年11月13日

なでしこリーグのSDGs もう一つのゴール オルカ鴨川FC編

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千葉県鴨川市は房総半島のリゾート地として人気です。美しい海と砂浜が広がり、優れたサーフポイントがあることでも知られています。鴨川漁港の南側に点在する大小七つの島々周辺は鴨川松島と呼ばれる絶景スポット。宮城県の松島を思わせる景観からその名がつきました。

しかし、しばらくの間、観光客が鴨川松島を訪れることはありませんでした。なぜなら、海につながる斜面が荒れ果て地滑りの危険もあり、立ち入りが禁じられていたからです。景勝地が荒れるきっかけは、周辺の海岸に海水浴場が開設されなくなったことでした。浜や草地の手入れをする人がいなくなりました。いつの間にか道路から海岸が見えないくらい雑草や竹が生い茂り、そこに多くのゴミが投げ捨てられるようになりました。

鴨川松島の景観は、長い間、多くの人から忘れ去られていましたが、2015年に鴨川松島再生プロジェクト協議会が発足。清掃や草刈りを繰り返し、美しい海岸と斜面を市民の手に取り戻しつつあります。

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鴨川松島の景色

オルカ鴨川FCは鴨川松島再生プロジェクト協議会に参加しています。「地域と共に」を合言葉にする以上、この活動を見過ごすことができませんでした。選手、スタッフが環境整備活動に加わります。広報業務を担当する柴田里美さんもその一人です。

「選手は海が大好きです。この地域の一員として生活しているので一緒に豊かな海の環境を守っていきたいと思い、皆で活動に参加しています」

鈴木陽選手は海と共に暮らす鴨川市の人々と日頃から接することで、環境を維持する大切さを実感することができました。

「海が好きでよく行くので、自分もきれいな海を保って行けるように自分にできることを続けていきたいと思います」

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環境整備活動に参加する鈴木陽選手

浦島里紗選手は環境整備活動に参加して驚きました。

「『こんなところにもある』と思うような場所にゴミがあったり『なぜここに』と思うようなものが落ちていたりして、ゴミの多さに驚きました」

過去に斜面に捨てられたゴミの量は凄まじく、一度の環境整備活動で軽トラック1台分のペットボトルやタイヤ、発泡スチロールを回収したこともあります。鴨川松島再生プロジェクト協議会の会長を務める佐々木久之さんは「素晴らしい海を次世代に引き継ぎたい」と話します。

「昔から暮らす地域の人たちと子どもたちが触れ合いながら、一緒に鴨川松島の環境を磨いていきたいです。活動に参加される皆さんが楽しみながら持続できる活動にしていくことを心がけています」

そして、子どもたちの憧れの存在となっているオルカ鴨川FCの選手たちが関わってくれていることがとてもありがたいと感じています。

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環境整備活動に参加する浦島里紗選手

「地元のサッカーチームの選手たちが、環境整備活動に参加していることが子どもたちに伝わると、この活動を身近なものに感じてもらえます。選手と子どもたちが、鴨川松島で一緒に記念撮影をしたり、遊んだり、会話したりして、ニコニコ顔で楽しんでくれます。ゴミを回収することと同時に、未来に向けて『なぜゴミを海に捨ててはいけないのか?』というアプローチも必要です。」

佐々木さんは環境整備活動の輪を幅広い年代に広げたいと思っています。鴨川市以外の地域で生まれ育ったオルカ鴨川FCの若い選手たち、そして、選手たちに憧れる子どもたちが、より多く、より継続して参加することで、この活動と想いは次世代にリレーされていきます。

Text by 石井和裕

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