連載コラム

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2023年08月15日

なでしこリーグのSDGs もう一つのゴール FCふじざくら山梨編

③エスコートシニア.jpeg

FCふじざくら山梨は地域活動、SDGsの取り組みに積極的です。その多くは地域の企業や団体とのコラボレーションで当初より広がっていきます。
富士吉田市は日本で初めて「転倒予防都市宣言」を行いました。転倒に負けない体づくりを推進し、子どもからシニアの方々まで、いきいきと過ごせるまちを目指しています。FCふじざくら山梨は山梨県南都留郡鳴沢村を練習拠点とし、近隣の富士河口湖町と富士吉田市でも活動しています。富士吉田市では「すべての人に健康と福祉を」等を目的にシニアの皆さんと交流を深めてきました。

「福祉の対象となる人たちには居場所の選択肢が少ない」と考えている上田潤さんは富士吉田市にある2階建ての一軒家を活用しソーシャルハウス宝島を運営しています。ここに地域のシニアの皆さんが集うことでコミュニケーションを生み出し「シニアの孤立・孤独」を解消しようとしています。FCふじざくら山梨も同じような課題を感じていました。そこで、2022年夏から選手がソーシャルハウス宝島を訪れるようになりました。定期的に交流会を開催するようになったのです。シニアの皆さんと一緒にソーシャルハウス宝島でご飯を作り、会話しながら楽しく食事をしたりバーベキューをしたりしています。この交流会から始まった取り組みが、徐々に広がっています。
「応援するチームが生活の中にあると『人の心が豊かになる』と思います。いつも一緒にいる人がサッカーで頑張っているから応援したくなる、FCふじざくら山梨の選手たちと、そんな自然な関わり方をできています。シニアの皆さんは、初めはサッカーのルールがわかっていなかったけれど試合を見に行くなら自分で調べる。選手の名前もメモして覚える。シニアのパワーとか魅力を僕は信じているので、そこを掘り起こせる可能性を、そんな毎日から感じていました」
上田さんは、FCふじざくら山梨と出会えてよかったと話します。FCふじざくら山梨とのユニークな取り組みが福祉関係の仕事をしている仲間たちの間で話題になることがあるそうです。

ソーシャルハウス宝島に集まるシニアの一人・舟久保ふみ江さんは、若いときは人見知りだったのだそうです。積極的に外へ出て他人と話をすることがあまりありませんでした。しかし、最近は人との接し方が変わったと自覚しています。
「FCふじざくら山梨の選手と、どんどんと話せるようになって、皆と楽しく過ごしています。ソーシャルハウス宝島に行くのが楽しみになっていますね」

選手がソーシャルハウス宝島を訪問した交流会とは逆に、シニアの皆さんにホームスタジアムに来てもらおうと開催したのが「ふじざくらシニアDay」です。昨シーズンに一度開催。今シーズンは2023プレナスなでしこリーグ2部 第5節で開催しています。試合前には「エスコートシニア」を実施しました。「エスコートキッズ」のように選手入場の際にシニアの皆さんが選手と手をつないで一緒にフィールドに入場。スタンドから大きな拍手を受けました。

①エスコートシニア.jpeg
エスコートシニア

エスコートシニアに参加した羽田恵子さんは「今まで経験したことがないことでした。孫のように交流している人が、試合に出て頑張っている姿を応援するのは楽しかった」と話します。そして、交流は、「ホーム」と「ハウス」を行き来するだけにとどまりませんでした。そこからシニアの活躍の場作りに発展したのです

②ソーシャルハウス宝島.jpeg
ブースのサポート

FCふじざくら山梨は試合会場に出店するブースの販売サポートをソーシャルハウス宝島の皆さんにお願いするようになりました。さらには、パートナー企業の横断幕の補修も依頼するようになりました。FCふじざくら山梨がここに存在することで、地域の皆さんがシニアの経験とスキルを有効活用できるようになったのです。

④ソーシャルハウス宝島.JPG
横断幕の補修

ソーシャルハウス宝島を運営する上田さんは「ただ支援を受けているだけでは、そこに本当の意味でのシニアの居場所は生まれてこない」と考えています。
「選手たちの富士吉田市のおかあちゃんとして、FCふじざくら山梨を支えるサポーターの一員として、シニアがしっかりと役割の担い手になっている。そして、それがお互いのエネルギーになって循環する。シニアを支援の対象ではなく、地域を支えるプレーヤーに変えていくことが重要ですし、それができつつあると思います」

選手も同じようなことを考え始めました。出口春奈選手はソーシャルハウス宝島との交流に積極的に参加してきました。その明るい性格で愛されています。ブースの販売サポートや横断幕の補修で、シニアの皆さんと一緒にホームゲームを創れることに喜びを感じています。
「このチームでやるべきことは明確です。自分が動けば人と人がつながるというのはすごいことだと思います。地域の一員として誰かの力になれると感じます」
高山紗希選手はFCふじざくら山梨のSDGs活動にやりがいを感じます。
「ただサッカーだけやっていてはできない経験をできます。取り組みから人のつながりが増え、この地域が盛り上がっていくことを感じられるから嬉しいです。(プレーしているときは)一緒に戦ってくれてパワーをもらえるし、この人たちが応援してくれているのだからもっと一生懸命な姿勢を見せて喜んでもらいたいと思っています」

シニアの皆さんとの交流から人や企業がつながりました。全ての人が健康で、いつまでも住み続けることができる豊かな地域づくりが、これから広がっていきます。

Text by 石井和裕

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