連載コラム

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2021年11月24日

なでしこリーグの歴史を知ろう 第17回「リーグカップ再開」

日本で女性がサッカーをプレーすることが珍しかった時代から、女子サッカーリーグ開幕、女子ワールドカップ優勝、女子プロサッカーリーグ創設、また、女子サッカーを取り巻く環境、そして社会情勢は大きく変化してきました。
年内にかけて全22回の連載を予定しています。激動の日本女子サッカーの歴史を振り返ります。
(毎週水曜更新)

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モックなでしこリーグカップ 決勝 日テレ・ベレーザvs 浦和レッドダイヤモンズレディース@埼玉スタジアム2002(2007/9/24)

 2007年、なでしこリーグで耳新しい大会が始まりました。「モックなでしこリーグカップ」。しかし実際には「新大会」ではありませでした。古い愛称の「L・リーグ」時代、1996年から1999年にかけて、「リーグカップ」は4シーズンにわたって行われていたのです。
 「リーグ戦とカップ戦の2本柱」は、サッカーの母国イングランドで19世紀の末に確立された形です。レベルの近いチームを10~20チーム程度集め、ホームアンドアウェーの総当たり2戦制で優勝を争うのが「リーグ戦」です。それに対し「カップ戦」は、さまざまななレベルのチームがエントリーし、ノックアウト方式で勝ち上がっていく大会で、負けたらそれ以上試合をすることはできません。
 「リーグカップ」もまた、イングランドで1960年に生まれたもので、「第3の大会」と位置づけられました。当初のアイデアは、カップ戦で早々と負けてしまったチームに新しいチャレンジの機会を与えようというものでした。
 日本でも、1976年に男子の日本サッカーリーグで「JSLカップ」が始まりました。しかしその事情はイングランドとは少し違いました。この年は、モントリオール・オリンピックの予選と本大会が春から夏にかけて連続して行われるため、日本代表はこれらの試合に集中しなければなりませんでした。そこで、リーグ開幕を思い切って8月末まで遅らせ、4月から5月にかけて新しい大会を開催することにしたのです。
 1996年にL・リーグがリーグカップを始めたのも、まったく同じ理由でした。この年は女子サッカーが初めて正式種目となったアトランタオリンピックが7月に開催されることになっていました。そこに向け万全の準備をするために、5月から日本女子代表チーム(後のなでしこジャパン)をアメリカに遠征させるなど、強化に努めました。リーグの開幕は、オリンピック後の8月18日となります。そこで、リーグカップを6月から7月にかけて開催したのです。この年にL・リーグ昇格を果たした「OKI FC winds」をもつ沖電気興業(株)がタイトルスポンサーになり、大会が実現しました。
 2000年から中断されていた大会が2007年に復活したのも、やはりなでしこジャパンの日程との関係でした。9月に中国で行われるFIFA女子ワールドカップへの準備期間を使って、1部8クラブ、2部8クラブ、計16クラブを4グループに分けて予選ラウンドを行い、ワールドカップ後になでしこジャパンの選手を含めて準決勝と決勝戦を開催する形としました。
 予選ラウンドでは、この年2部に昇格したばかりで首位を走る「東京電力女子サッカー部マリーゼ」が1部上位の「TASAKIペルーレFC」を3-1、「伊賀フットボールクラブくノ一」を7-2で下して準決勝に進出するという波乱がありました。しかしなでしこジャパンに9人もの選手を送り込みながらも予選ラウンドを全勝で突破した日テレ・ベレーザの力は図抜けており、代表選手たちが復帰した決勝トーナメントでは準決勝で「INACレオネッサ」に5-0、決勝戦では「浦和レッズレディース」に2-1で勝って優勝を飾ります。
 リーグのタイトルスポンサーだった「モック」がこの年でその座を降りたため、「なでしこリーグカップ」は2年間中断しましたが、2010年に「プレナスなでしこリーグカップ」として再復活します。そしてなでしこジャパンの日程の都合というより、それぞれのクラブの試合数を増やし、レベルアップにつなげようという考え方で行われてきました。
 2014年と2015年は、1部リーグで10チームによる2回戦総当たりのリーグの後に上位6チームと下位4チームに分かれての「エキサイティングシリーズ」を開催、上位6チームは年間28試合になったためにまた中断されましたが、2016年には1部と2部が分かれて行う形で「再々復活」。以後は同じ形で続けられました。
 2020年には再び1部と2部の大会をまとめ、計20チームを5チームずつ4グループに分けて予選ラウンドを開催することになっていました。しかし残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大のために中止になり、2021年も行われませんでした。
 リーグカップは試合数を増やし、多くの選手が公式戦を経験できる機会を与えます。若い選手がリーグカップで活躍することで自信をつけ、評価を高めて、その後のリーグでチームを牽引する活躍を見せる例を、なでしこリーグだけでなく、Jリーグでもよく見ます。「なでしこリーグカップ」は、日本の女子サッカーの発展のためにとても重要な大会ということができるのはないでしょうか。

文=大住良之(サッカージャーナリスト)
写真=Jリーグ

(つづく)

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