連載コラム

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2021年09月02日

日本全国なでしこリーグの街を訪ねて ニッパツ横浜FCシーガルズ編

神奈川県横浜市は、横浜FC、横浜F・マリノス、Y.S.C.C.横浜の3つのJクラブのホームタウンになっています。また、東京2020オリンピック競技大会ではサッカー競技(男女)の会場となりました。女子サッカーの決勝戦が横浜国際総合競技場で開催され、激戦の末、カナダ女子代表が世界一に輝いたことは、記憶に新しいです。今回は、ニッパツ横浜FCシーガルズのホームタウンである横浜市を訪れます。

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いつも賑やかな横浜中華街

横浜市民に愛され続ける2つの「ニッパツ」
日本発条株式会社 総務部 広報グループ 斉藤浩明さん

皆さんは「ニッパツ」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。女子サッカーチーム?スタジアム?......ニッパツ三ツ沢球技場は、サッカー5チーム(ニッパツ横浜FCシーガルズ、横浜FC、横浜F・マリノス、Y.S.C.C.横浜、日体大FIELDS横浜)のホームスタジアムとなっています。横浜市民に親しまれているニッパツは、世界トップのばねメーカー・日本発条株式会社の呼称です。本社は横浜市金沢区にあります。

横浜FCシーガルズが誕生したのは2013年のこと。一般社団法人横浜FCスポーツクラブと、NPO法人横須賀シーガルズスポーツクラブの女子トップチームが提携して発足しました。2016年より、ニッパツとトップスポンサー契約を結び、チーム名をニッパツ横浜FCシーガルズとしています。

ニッパツとサッカーとの関わりは、2008年に、横浜市との間で結ばれた、三ツ沢公園球技場のネーミングライツ(施設命名権)契約に遡ります。この契約に関わった日本発条株式会社 総務部 広報グループの斉藤浩明さんは、それ以来、ずっと横浜のサッカーに携わってきました。「ニッパツ三ツ沢球技場が、企業、サポーターさんからも愛されて、行政もそれに加わり、様々なステークホルダーが一緒にスポーツを盛り上げて、サッカーを軸として横浜市の活性化をできればと思いますね」と斉藤さんは言います。

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ニッパツ三ツ沢球技場にて 日本発条株式会社 総務部 広報グループ 斉藤浩明さん

ニッパツは、いわゆるBtoBの製造業の企業です。消費者に製品を直接お届けするのではなく、主に自動車メーカーに製品を納入しています。それゆえに、以前は、あまり社名が知られていなかったのですが、ニッパツ三ツ沢球技場とニッパツ横浜FCシーガルズの2つのネーミングライツを始めることで、就活をする学生や投資家からの知名度が飛躍的に向上したそうです。

「ニッパツ横浜FCシーガルズのネーミングライツについて、2015年12月にクラブから打診があり、社内で企画書を提出したら社長決裁になりました。社長のところに行ったら『地域に根ざしたチームのお役に立てるのなら、ぜひやろう』と即決しましたね。その2日後に、横浜FCシーガルズが2015プレナスなでしこリーグ2部・チャレンジリーグ入替戦で勝利。なでしこリーグ昇格が決まったという連絡を、クラブのご担当者からいただきました。とても劇的な年末でした」

斉藤さんは「サッカー界全体が地域との関わりを大事に考えて歩んできたことが良かった」と言います。「ホーム開幕戦とホーム最終戦では、スタンドから『ニッパツコール』が起こります。地元企業のニッパツによる支援が、根付いてきていると感じます。長年の間に、横浜市、ニッパツ横浜FCシーガルズ、ファン・サポーターと良い関係を構築できたと思っています」

ニッパツ横浜FCシーガルズは、今年もニッパツの名を胸に、なでしこリーグを戦っています。そして、ニッパツは2021年2月17日に、三ツ沢公園球技場のネーミングライツについて5年間の契約延長更新を発表しました。横浜市民に愛されるお付き合いは、まだまだ続きますね。

アマチュアリーグのトップと共に戸塚区から未来を創りたい
横浜未来ヘルスケアシステム 理事長 横川秀男さん

横浜市戸塚区に、女性アスリート26人が働く医療法人があります。ニッパツ横浜FCシーガルズのオフィシャルクラブトップパートナーである医療法人横浜未来ヘルスケアシステム(以下:横浜未来ヘルスケアシステム)は、地域に密着した医療サービスを提供している医療グループです。ニッパツ横浜FCシーガルズの活動拠点となっている横浜市戸塚区を中心に、病院をはじめ24の医療介護施設と看護専門学校を運営しています。横浜未来ヘルスケアシステムでは、女子サッカー選手だけではなく、女子ラグビーチーム・YOKOHAMA TKMの選手も働いています。

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横浜未来ヘルスケアシステムで働く權野貴子選手

權野貴子選手は2020年シーズンよりニッパツ横浜FCシーガルズに加入。横浜未来ヘルスケアシステムで働いています。病院勤務の経験は将来に役立つと言います。「いずれは地元の石川県に帰って、女子サッカーの普及にかかわることができるようになりたいです」という權野選手。日々奮闘しています。

横浜未来ヘルスケアシステム 理事長の横川秀男さんは、高校・大学で6年間、ラグビーをプレーし昭和大学ラグビー部の監督も務めました。

「スポーツを一生懸命やってきた人は仲間や相手を思いやることを高いレベルで身につけています。だから、横浜未来ヘルスケアシステムでは、スポーツをやってきた人を積極的に採用しています」というのは、横川さんがスポーツマンならではの採用方針です。

横浜未来ヘルスケアシステムは『ニッパツ横浜FCシーガルズの選手と一緒に!⚽サッカー教室』、毎年ピンクリボン月間に開催する『戸塚共立メディカルグループピンクリボンマッチ』等を通じて女子サッカーによる社会貢献活動を行なっています。横川さんは、女子サッカーのどこに魅力を感じているのでしょうか。

「まず面白いですよね。テレビで放送されて、みんなに親しみがある。だから、人気があります。『なでしこリーグの選手がクリニックにいる』と伝えると患者様・利用者様はびっくりされます。我々のような医療グループは、女子サッカークラブを応援することで信頼性が高まります。スポーツを通じて社会貢献度をできます。特に横浜においては、女子サッカーはとても愛されていますから」

女子サッカー界は、WEリーグが発足し、大きく変わろうとしています。横川さんは、ニッパツ横浜FCシーガルズと、どのような関係を続けていきたいと考えているのでしょう。聞いてみました。

「今の『アマチュアのトップリーグ』というのが僕らにとっては良いですね。あえて言うなら『WEリーグに行かないで、なでしこリーグの一番上の順位にいてほしい』というのが本音です(笑)。そうすると縁はいつまでも切れないし、我々も応援のしがいがあるからです」

戸塚区内最大規模の医療法人を率いる横川さんは、同じ戸塚区のニッパツ横浜FCシーガルズと共に、地域の未来をより良くしたいと願っています。

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横浜未来ヘルスケアシステム 理事長 横川秀男さん 後ろに見えるのは『戸塚共立メディカルグループピンクリボンマッチ』の写真

オフィシャルパートナーの社長が選手バスの運転手!?
武松商事株式会社 代表取締役 金森和哉さん

選手バスの運転手が、実はオフィシャルパートナーの社長だったとしたら......誰もが「えっ!?」と驚くお話です。武松商事株式会社 代表取締役の金森和哉さんは、なぜ、ここまで、熱心にニッパツ横浜FCシーガルズを応援することになったのでしょう。

「最初は、横浜FC(Jリーグ)に営業に行ったつもりが逆に営業されて(笑)スポンサーを始めました」

営業に向かったきっかけは、横浜FCがISO14001認証(環境マネジメントシステムに関する国際規格)を取得していたからだそうです。武松商事株式会社は循環型社会形成への貢献を目指す廃棄物処理の企業。金森さんはこの事業を「アイデア事業」と捉えています。例えば「アップサイクル」。不要になったものを加工して新しい価値を生み出しています。ニッパツ横浜FCシーガルズの選手と一緒に「アップサイクル」のイベントにも取り組んでいます。

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「アップサイクル」で作ったマスクを持つエコクル事業部勤務の山本珠優選手と、レコードから作った時計を持つ 管理部広報企画担当の高橋美樹さん (※撮影時にマスクを取りました。)

社員のアイデアから生まれた「アップサイクル」商品をニッパツ横浜FCシーガルズのファン・サポーターに購入してもらい、その売り上げを新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために最前線で戦う医療従事者や、感染拡大防止活動を行う方々への経済的支援に役立てているのです。

「我々にできない力を持っているのが横浜FCじゃないですか。(ファン・サポーターに購入してもらうような)力を借りて活動が広まっていけば、横浜市が循環型社会の推進で盛り上がる。横浜FCも環境に配慮したチームとして見え方が変わってくると思います」

金森さんは2014年から2019年まで休日にニッパツ横浜FCシーガルズのアウェイ遠征のバス運転手を買って出ていました。

「当時の選手は、練習試合に行くのに自家用車の乗り合いで移動していました。それで『どうせ俺は試合を見に行くから俺が運転するよ』という建前で、運転手を始めました。本音を言うと『仲間に加わりたかった』気持ちがあったかもしれませんね(笑)」と少し照れながら語ります。金森さんは気軽な気持ちから始めたのかもしれません。でも、運転するのはオフィシャルパートナーの社長。選手は戸惑ったに違いありません。

「選手に気を遣わせたくなかったですね、スポンサーの社長だからって。だから、ほとんど無口で運転していました。そのうち、だんだんと慣れてきて、いつの間にか、自然にお父さんみたいになっていました」

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武松商事株式会社 代表取締役の金森和哉さん (※撮影時にマスクを取りました。)

その後、ニッパツ横浜FCシーガルズが、なでしこリーグ2部に昇格を決めたとき、選手から「社長!社長!」とピッチに呼び込まれた金森さんは、なんと選手の手で胴上げされました。金森さんは、どのような気持ちだったのでしょう。

「胴上げなんてされる経験がないじゃないですか。それまで、選手たちの苦しみを見てきたので、ずっと涙が止まらなくなるくらい感動しました。昇格の喜びを一緒に味わえたのは彼女たちのおかげですね」

今、ニッパツ横浜FCシーガルズはなでしこリーグ1部を戦っています。最後に金森さんに聞いてみました。「最初に営業に行ったときに、こんな未来を想像できましたか?」

金森さんは答えます。「ニッパツ横浜FCシーガルズという女子チームがなかったら、こんなにクラブの近くで、一緒に歩んでいなかったと思いますね」

金森さんの周りには、ここで紹介したような、素敵なエピソードが、たくさんあります。それらはエコクル事業部勤務の山本珠優選手らが社内報に編纂しています。金森さんから全従業員へ、ニッパツ横浜FCシーガルズを応援する輪が広がっています。

今回はニッパツ横浜FCシーガルズのホームタウン・横浜市の皆さんを訪ねました。

Text by 石井和裕

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