スペシャルインタビュー
安藤梢選手(FCRデュイスブルク(ドイツ女子ブンデスリーガ1部)所属)
今回のスペシャルインタビューは、昨年12月に浦和レッドダイヤモンズレディースからドイツ女子ブンデスリーガ1部のFCRデュイスブルクに移籍し活躍する安藤梢選手に、ドイツでの様子や日本との違いについてお話をいただきました。
----なでしこリーグとブンデスリーガの違いについて

サッカーのスタイルが全く違うというのを、第一に感じました。
その中で一番感じたのは、強くて、速いということです。
強いというのは、あたりが強い、あとヘディングが強い。とにかくみんなヘディングが強くて、ヘディングが弱い選手はいないのではと思ったほどです。
また、平均身長173センチあるのですが、試合に出場する代表クラスの選手はみんな足が速く、全体的にもスピードのある選手が多いです。
そして攻撃のスタイルも、たてに速いサッカーが主流。中盤の横パスは少なく、ボールを奪ってからたてにボールが入るので、通れば一気にゴールチャンスにつながるサッカーをしています。
どの選手もキック力があり、ディフェンスラインから自分のところ(FW)にも一発でパスが入ってくるし、一番驚いたのが左のサイドバックから右のサイドハーフにパスが一発で通ること。
ドイツではミスを恐れないプレーをする。全てのパスが通るわけではないですが、通った場合は当然ビックチャンスになるし、ゴールにもつながる。日本のサッカーはボールを奪われないポゼッションサッカー。当然ミスをしないパスが多くなるのだが、ドイツはミスを恐れない大胆なプレーをするなと実感しました。ドイツのサッカーは、怖さのあるサッカーですね。
試合に出た当初は、なでしこリーグと同様にボールを保持している選手に対してボールを受けに行ったのですが、パスがもらえなかった。それからはボールを受ける前の早い予測、早い準備、スペースでボールを受けることを意識しだしたところ、パスももらえるようになりました。
ドイツの女子選手はフィジカルだけの強さだけでなく、心の強さ「ゲルマン魂」を感じますね。試合の時も、サッカーの試合というよりも、「戦い」という感じがします。「ゲルマン魂」というのは、本当にあるんだなと実感しました。試合の時も監督の指示が変わっていて、みんなに「吠えろ」と言います。ボールをもらう時も吠えろ、ファールされても吠えろと言われます。移籍した当初、吠えろという指示が、とても印象的でした。
最後まであきらめないで、粘り強く頑張るのは日本人の方ですね。ドイツ人は、球際の戦い、1対1の戦いのところでの気持ちが強いですね。
----ドイツでのトレーニングについて
私がチームに合流した時期は、水曜日にチャンピオンズリーグの試合があり、日曜日にリーグ戦があったので、体調管理は気を遣いました。
トレーニングのサイクルは日本とそう変わらず、試合の翌日はクールダウン、その翌日からは次の試合に向けてトレーニングといったものです。
ただ、私たちのチームは1対1のトレーニングが比較的多く、監督には「あなたは1対1で仕掛けることができるから、それをやり続けなさい」と言われました。
トレーニングメニューで、前を向いた1対1、マークを背負っての1対1や、サイドでの1対1など、1対1のバリエーションが多いです。
また持久力系のトレーニングはないのですが、、水曜日、日曜日の試合の間隔の中でも、短いダッシュなどのスプリント系のトレーニングがありました。
練習場は天然芝と人工芝が一面ずつあるのですが、天然芝のピッチはボコボコですね。日本の芝は、すごいきれいなんだなと改めて思いました。2月に行ったので、雪が融けた後などはグランド状態が非常に悪く、みんなが履いているスパイクは日本では見たことが無いような長い取り換えのスタッドが付いていました。このぬかるんだ芝で普通にプレーするドイツの選手たちは、強くなるのもうなづけました。
クラブハウスはロッカールームとシャワーがあるだけの建物です。ドイツ女子代表は世界でトップにいますが、女子サッカーの環境という面では、男子に比べてまだまだといったところです。
----試合の移動について
アウェーの試合は結構大変で、全てバスで移動しています。一番長いのは、バイエルン・ミュンヘンに行った時で8時間掛かりました。これが一番苦手ですね。前泊はするのですが、夕方に試合が終わって帰ってくるのは夜中になっていました。ポツダムへの移動なども、7時間掛かかりました。長い移動が2週間続いた時もあって、体力的にも辛かったですね。チャンピオンズリーグの海外遠征も、バスで移動していました。ドイツはアウトバーンがあるなど、車社会なんだなと痛感しています。
----コミュニケーションについて
最初は、まったくドイツ語が分かりませんでしたので、大変でした。簡単な単語を選手たちに教えてもらい、毎日「昨日教えたこの言葉は覚えている?」と聞かれ、段々コミュニケーションが取れるようになりました。ドイツでは月に6回、ドイツ語のレッスンを受けています。少しずつ聞き取れるようになってきましたが、話す発音がとても難しく、何度もチームメイトに聞き返されています。(笑)ドイツ語は難しいですが、通訳も付けていませんので、今必死になって覚えています。
コミュニケーションは、しっかりと伝えないと、何も始まりません。自分はこれが出来るとか、これは分からないと、はっきりと言わないとダメ。気を使って「いいです」とか遠慮して言ってしまうと、ああ、ホントにいいんだなと思われてしまう。
基本的にドイツ人は自分の意見をしっかり持っていて、意見をぶつけ合うのが普通。例えばミーティングは、日本では監督だけが話をして、選手は聞いているのが普通なのですが、ドイツではミーティング中監督の話に対して選手たちが意見を言う。練習中も結構言い合っている。それが当り前で、意見を言ったからといって険悪なムードになることはないです。私はまだ言葉が達者ではないので、意見を言うところまでいっていないですが、是非その輪に入っていきたいですね。
また、ドイツは日本と違い、上下関係などまったくありません。みんな年齢を気にしてないですね。チームは17歳から30代前半までの選手がいるのですが、みんなフランクですね。
----ドイツのリーグ戦について

ドイツのスタジアムは西が丘サッカー場のような、サッカー専用スタジアムが多いです。選手とお客さんの距離が近いので、とてもアットホームな感じです。お客さんは日本と違い年齢層が高く、おじいちゃんやおばあちゃんも結構多く見に来てくれています。ドイツは日本のようにまとまって応援するのではなく、ひとりひとりが「いいプレーだ!」とか「しっかりしろ!」とか言って、好きなチームを応援しています。ホームゲームでは、平均2000人ぐらいのサポーターが入っています。アウェイで下位のチームでしたら、500人ぐらいの観客が入ってる感じですね。上位チームは2000人ぐらいの観客が入っています。全て有料ゲームです。ドイツカップの決勝はケルンのスタジアムでやったのですが、27000人の観客が入っていました。
ドイツカップの準決勝、決勝などは、テレビ放映がありましたが、リーグ戦のテレビ放映はほとんどありません。
新聞では試合結果も含めてよく掲載されています。ゴールを決めた翌日などは街を歩いていても、新聞を見た人からよく声を掛けられます。ゴールを決めた翌日は「良かったな」と声を掛けられ、ゴールを決められなかった翌日は「もっとがんばれ」とか、励ましてくれます。ご年配の方がよく声を掛けて下さります。本当にサッカーが好きなんだなって、実感しますね。
----ドイツでの生活について
食事は自炊しています。最初はスーパーでの買い方とかもわからなくて。あと難しいのは調味料をスーパーで買う時ですね。字がまだ読めないので、何の調味料か分からない。車で30分ぐらいの所に日本人の方が住んでいらっしゃって、その方にいろいろ教えていただきました。向こうで知り合った日本人の方々やドイツ人の方々に一緒にスーパーに連れて行ってもらって、これがおいしいとか教えてもらえました。今は自分のリズムで買い物が出来るようになり、買い物も料理も結構楽しんでしています。
住まいは一部屋だけ貸し出せる部屋をお持ちの、大家さんから借りています。玄関も別、キッチンやシャワー、トイレも私の部屋に付いています。大家さんと一緒に住んでいる感覚なので、とても安心して生活できています。
移動はクラブで用意してもらった車でしています。大家さんに同乗してもらい2回ぐらいトレーニングしたのですが、全てが反対なので、気を抜くと反対車線を走っていることがあります。練習に行く時はまだ不安ですので、練習時間に遅れないよう早く家を出るよう心掛けています。
最初は大変でしたが、向こうで出会った人たちに助けてもらいながら生活しています。うまくいかないことも多いですが、ポジティブに考えて生活を楽しんでいます。
----今後の目標
昨シーズンはリーグ戦が2位、チャンピオンズリーグも準決勝で負けてしまい、カップ戦しか優勝できなかったので、来シーズンはこの3つのタイトルを取りたいと思っています。昨シーズンはとても悔しい思いをしたので、今シーズンは何が何でも自分の力でチームに貢献して、タイトルを取りにいきたいという強い思いがあります。
来年は自分がプレーをしているドイツでワールドカップがあります。北京オリンピックでなでしこジャパンは4位という成績で悔しい思いをしたので、ワールドカップではドイツ、アメリカを倒して上位を目指します。今ドイツでプレーしてみて実際にドイツが強いのを実感し、自分がプレーしてみてやれないことはないと感じています。これからも強い気持ちを持って、日本の良さを出して、みんなで戦えばこうした強国にも勝てると思っています。
これからも、皆様の応援よろしくお願いします。
安藤選手は7月3日からドイツでのトレーニングが再開します。そして8月から来シーズンが開幕いたします。
皆様も是非、安藤選手のより一層の活躍に、ご期待下さい。
安藤選手の情報はこちら
|